ピロリ菌と胃癌、胃腸の不快な症状と漢方
2007年2月24日
胃や大腸の内視鏡検査などで異常が見つかれば、病気に応じて治療が必要になります。たとえば胃カメラで胃・十二指腸潰瘍と診断された場合、ピロリ菌という胃に住みついた細菌が確認されれば除菌療法(抗生物質や特定の胃薬を内服するだけです)を行います。除菌が成功すれば、潰瘍の再発率はほぼ2~3%にまで低下し、胃痛や胃もたれなどの不快な症状の多くは消失します。ピロリ菌の除菌が、いかに画期的な治療法であったかということは、ピロリ菌の発見者にノーベル賞が与えられたことからもお分かりいただけると思います。
しかし、ピロリ菌を除菌しても胃癌になる可能性が低くなるわけではないようです。胃の調子が良くなりすぎて、胃カメラを受けなくなってしまう方が増えています。最近では、このため胃癌の発見が遅れてしまうことが危惧されています。胃癌を早期に発見すれためには、定期的な検査が必要であることに変わりはありません。
さて、胃や大腸の内視鏡検査など精密検査で特別な病気が見つからなければ一安心です。検査で異常がないことが分かると、胃腸の調子がよくなり、不快なお腹の症状がなくなることもしばしばあります。このような場合は、自分は病気なのではないか?という不安が症状を出現させていたと考えられます。しかし、検査で異常がなくてもさまざまな不快なお腹の症状(胃が痛い、胃がもたれる、胸焼けがある、下痢、便秘など)が持続する場合どうすればよいでしょうか?このような場合、胃腸の動きや消化液の分泌に問題が生じている可能性があります。その原因としてはストレスなどによる自律神経(胃や腸の機能をつかさどる神経)の異常が考えられます。食生活などの生活習慣をあらためることや休養も必要ですが、忙しい現代社会では難しい場合も多く、ストレスを完全になくすことはできません。
便秘や下痢などの便通異常に対しては、ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌など善玉菌を摂取することも良いと思われます。最近では、乳酸菌が生きたままお腹にとどく可能性の高いプロバイオティクス製剤がサプリメントとして多く販売されています(当院ではKE99というサプリメントを治療に取り入れています)。それ以外の様々な胃腸症状に対して、一般的には消化酵素剤、胃腸の運動機能を調整する薬、あるいは軽い精神安定剤など、内服薬による治療を行うことが多いですが、もう一つの選択肢は漢方薬による治療です。
漢方薬は体質改善の薬と思われがちですが、必ずしもそうではなく即効性があります。漢方治療は、患者さん個々の体質や症状などに応じた細やかな対応が可能です。漢方には長い歴史があり、薬効についてはまだ解明されていないことも多いですが、その有効性は経験的に証明されています。
当院は、日本東洋医学会名誉会員、同学会認定漢方専門医である裏辻嘉行博士のご指導の下に、漢方薬を積極的に治療に取り入れています。機能性ディスペプシア(FD)、過敏性腸症候群(IBS)など機能性胃腸症による胃腸の不調のみでなく、あらゆる疾患に対して漢方治療が可能です。
裏辻嘉行 医学博士
略歴;昭和3年和歌山県生まれ。大阪医科大学卒業。
神戸医科大(現神戸大医学部)第二病理学教室、大阪医科大第二内科学教室を経て、昭和33年豊中市庄内に裏辻医院開業、現在に至る。
日本内科学会認定内科医、日本東洋医学会認定漢方専門医
役職など;
日本東洋医学会名誉会員、
関西臨牀漢方医会代表理事、
西日本医師漢方アカデミー前会長