増えている大腸癌、減っている胃癌
2006年1月19日
従来日本では胃癌にかかる方が多く(罹患率が高いといいます)、そのために亡くなる方も多かった(死亡率が高いといいます)のですが、ここ数十年の間に、罹患率および死亡率とも減少してきています。胃癌の罹患率と死亡率の減少には近年話題のピロリ菌(ヘリコバクターピロリ;後日詳しく述べるつもりです)という細菌に感染している人の割合が減ってきていること、及び早期胃癌のうちに治療され治癒する人が多くなっていることが関係していますが、それ以外にも日本人の食生活の欧米化が関係しています。動物性脂肪を多く含んだ欧米型の食生活のため胃癌にかわって著明に増加しているのが大腸癌です。
大腸癌の罹患率は急激に増加していますが、死亡率は増加傾向にあるとは言え、比較的ゆるやかに増加しています。これは大腸癌が胃癌と同様に、早い時期に治療すれば治癒する可能性が高い癌であり、最近では早期に発見、治療されることが多くなっていることを反映していますが、依然として大腸癌で死亡する人が増加していることに変わりはありません。
大腸癌の早期には目には見えないわずかな出血があることが多く、そのため大腸癌検診としては便潜血反応という便に血が混じっていないかどうかを調べる検査を行います。この検査で陽性(出血あり)となった場合は癌やポリープ(腺腫という良性腫瘍のことが多い)などが見つかる確率が陰性(出血なし)の場合より高く、大腸内視鏡検査など精密検査が必要となります。但し、陽性でも癌やポリープなどの病変が見つからないことの方が圧倒的に多く、また、陰性であるからと言って100%病変がないと言うことにはなりません。出血のない癌やポリープも多く、本当に病変がないことを確かめるには精密検査を行わなければわからないというのが正直なところです。
大腸癌の症状としては血便に加えて便通異常があります。
すなわち(1)便秘と下痢が交互に起きる(2)便が残った感じがする、排便してもすぐ便意をもよおす、(3)便が細くなる、最近便秘がひどくなってきた、などの症状です。このような症状のある方は大腸内視鏡検査などの精密検査が必要です。また、血縁者に大腸癌になった人がいる方、その他がん家系の方なども検査を行ったほうがベターと考えられます。
胃癌、大腸癌とも早期に発見すれば治癒する確率のきわめて高い癌であり、胃や大腸のポリープに限らず、癌の場合でも状態によってはおなかを切らずに内視鏡で切除できる場合があります。少しでも気になる症状があれば早目に受診し、必要に応じて内視鏡検査(胃カメラ、大腸内視鏡検査)などの精密検査を受けましょう。